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プーアル茶に最適、四級茶葉
長期熟成を行うプーアル茶では四級茶葉がベストとされます。四級茶葉の代表であり、プーアル茶を代表するレシピ7542を中心にその他の四級茶葉プーアル茶を見てみましょう。今回比較するプーアル茶、M0803 大益茶7542、X0003 雲南下関四號餅茶、R0001 俊昌號7546 の三つです。
プーアル茶の評価
R0001 俊昌號7546 |
X0003 雲南下関四號餅茶 |
M0803 大益茶7542 |
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甘口、飲みやすい | スパイシー!、個性派 | 元祖、バランスの良さ |
四級茶葉について
数々の銘茶の歴史の延長上に位置し、73青餅、88青餅といった現代の銘茶を生み出してきた7542は1975年に 孟海茶廠が生み出したレシピです。7542はそのレシピ番号から読み取れる通り、四級茶葉をメインとしており孟海茶廠の、ひいてはプーアル茶の標準品として人気を博しています。
四級茶葉は成長度でいうと一芽三葉で若芽が持つまろやかさ、そして茶葉の持つ苦みのバランスがよく、その茶気は十分、生産性も問題ない「ちょうどいい」茶葉となります。雲南省の茶づくりでは伝統的に沱茶にはより小さい1-3級茶葉、餅茶は4-6級、磚茶は7-9級茶葉で作られていました。
現在はいろいろなプーアル茶が作られるようになっており、そのような決まりごとはなくなりましたが今でもプーアル茶づくりの基本は一芽三葉となっています。
7542、そして四號茶葉がプーアル茶づくりに最適であるというとそういうわけではなく、あくまで孟海茶廠が作るプーアル茶の一つの「型」であり、どのようなプーアル茶を求めるかでその作りは変化します。
例えば、下関茶廠は五級茶葉を基本としていますし、孟海茶廠であればより雪印青餅のように小さな三級茶葉をメインとして風味を強化した7532レシピや、より成長して苦みを引き出した、別名五号青餅と呼ばれる金大益など銘茶として繰り返し作られるプーアル茶もあります。
さらには易昌號のように、茶葉のサイズ、等級にこだわらずおいしい茶葉で作るプーアル茶もあります。
今回比べたプーアル茶
R0001 俊昌號7546 |
X0003 雲南下関四號餅茶 |
M0803 大益茶7542 |
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六大茶山 | 下関茶廠 | 孟海茶廠 |
2018年 | 2018年 | 2017年 |
M0803 大益茶7542
は孟海茶廠が作るバランスのいい、まさに「プーアル茶の標準品」です。下関茶廠のX0003 雲南下関四號餅茶は下関茶廠らしい、パンチの効いた味わいが特徴、そして六大茶山が作るR0001 俊昌號7546は俊昌號ブランドらしい穏やかな、香り華やかな一品に仕上がっています。
どれも四級茶葉をメインで作ったプーアル茶ですが、それぞれオリジナリティのあるプーアル茶に仕上がっています。
餅茶を比べる
「配法(ブレンディング)」が行われているプーアル茶ではしばしば餅面には等級の高い茶葉を置いて見栄えをよくするという手法が使われます。
そのオリジナルはもちろん孟海茶廠で、餅面には「毫(産毛の多い若芽)」の多い茶葉が見られ、茶葉のサイズも一回り小さくなっています。下関茶廠の四號餅茶も茶葉のサイズも小さくなっていますが、毫のある茶葉はそこまで多くありません。そして、俊昌號 7546は茶葉のサイズはそこまで小さく見えませんが、毫のある茶葉はより多く見えます。
一方、裏面をみると大益茶 7542は茶茎が見られ、毫のある茶葉は表面よりも明らかに少なくなっていますが、下関茶廠の四號餅茶は茶葉のサイズは大きくなっているものの、毫の量は表面と同じように見えます。そして、俊昌號 7546は表面とその印象が変わりません。
プーアル茶を淹れる
茶葉を崩してプーアル茶を淹れてみましょう。
2018年の大益茶 7542は一昔前の7542に比べると押し固め度がやや緩くなっています。一方、下関茶廠の四號餅茶、俊昌號 7546はしっかりと締まっています。四號餅茶の硬さは下関茶廠の伝統、俊昌號は餅茶のサイズが小さいのでよく押し固められているためでしょう。
今回のプーアル茶のように配法がされているプーアル茶(特に大益茶 7542)を淹れる際は表面、裏面に偏らずまんべんなく崩した茶葉で淹れることがそのプーアル茶本来の味を引き出すために重要です。
プーアル茶を味わう
左から俊昌號 7546、下関茶廠の四號餅茶、大益茶 7542です。 写真からはあまりわかりませんが、俊昌號 7546の水色が少し薄くなっていますが、作られた年も近いのでほとんど変わりがありません。
どれも四号茶葉をメインに作られていますが、その風味にはそれぞれ特徴があります。
大益茶 7542はバランス感です。
程よい甘み、苦みと渋み、そして香りの良さ。プーアル茶らしいプーアル茶です。まだ若いのでさっと淹れて苦みで程よく引き締まった味わい、そしてその中にある風味と杯に残る香りの素晴らしさが感じられます。蘭香、蜜香が基調となりますが、その奥に複雑さを感じるさすがの作りです。プーアル茶らしいおいしさを十分に味わえます。
俊昌號 7546は俊昌號の味づくりを継承しています。それはすなわち甘みを引き出す茶づくりです。おそらく萎調を長めにとり発酵させることでハチミツのようなとろりとした蜜香を引き出しています。大益茶 7542と比べるとシンプルに甘みを感じる香りです。味わいもその香りから期待される通り、甘みを強く、そして苦みと渋みは一歩下がった、飲みやすいプーアル茶に仕上げられています。
下関四號餅茶は四級茶葉を下関茶廠が仕上げるというコンセプトそのままに、下関茶廠らしい薫香の香るスパイシーな風味、苦みのトップノーズが特徴的です。そして、その苦みの後にくる回甘がこのプーアル茶のおいしさです。俊昌號とは好対照ですが、大益茶 7542の延長にあることも感じられる仕上がりです。
R0001 俊昌號7546 |
X0003 雲南下関四號餅茶 |
M0803 大益茶7542 |
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水色 | やや薄い | オレンジ⁻茶色 | オレンジ⁻茶色 |
香り | 花蜜香、まろやか | 燻香、蜜香、スパイシー | 清香、蘭香、蜜香 |
味 | 甘み、まろやか | スパイシー、回甘 | 口感、程よい苦みと渋み |
葉底 | 黄緑 柔らか、柔捻弱 |
やや茶色 やや硬い、柔捻普通 |
緑黒、黄緑が混ざる 普通、柔捻普通 |
葉底(煎じた後の茶葉)を観察する
基準である大益茶 7542の葉底から見てみましょう。四級茶葉をメインの茶葉としていますが、若芽から6級茶葉程度の大きな茶葉が見られます。暗緑色の葉底で柔捻もしっかりとされています。
下関四號餅茶の葉底は孟海茶廠に似ていますが、茶葉のサイズは一回り小さめです。もともとしっかりと押し固められているので特に大きな茶葉はどうしても崩れてしまいます。大益茶 7542と比べると少し茶色味が強くなっています。
俊昌號の葉底はほかの二つのプーアル茶と比べると整った葉底です。
ストレスをかけられていない茶葉は形をよく残しています。色見もほかの二つのプーアル茶とは異なり、黄緑をよく残しています。柔捻も弱めで、茶葉のサイズのばらつきも少なく端正な葉底です。俊昌號らしい葉底といえるでしょう。
まとめ
今回は四級茶葉という共通点に注目してみました。
同じ四級茶葉でも俊昌號 7546は甘口、下関四號餅茶のスパイシーさ、そして大益茶 7542のバランス感。それぞれが異なるおいしさ、そしてその風味は大きく違います。
茶葉等級はプーアル茶選ぶの一つの目安ですが、それ以上に「どんなプーアル茶を作るか」という作り手によります。孟海茶廠の7542はプーアル茶の基準とされますが、それぞれの茶廠が持つ個性を楽しむきっかけになったらとてもうれしく思います。